歯列矯正で腰痛が治るとは、今回確認した資料から判断できません。かみ合わせと頭・首の姿勢、脊柱変形を調べた研究はありますが、一般的な腰痛を矯正で治した研究と同じではありません。腰痛には筋肉、椎間板、神経、内臓、仕事、睡眠など、複数の要因が関わります。
腰痛の治療を目的に歯列矯正を始めたり、矯正中の腰痛を装置のせいと決めつけたりせず、歯と腰をそれぞれ診察してもらうことが安全です。
歯とかみ合わせ、腰痛の因果関係は分かっている?
2019年の系統的レビューは、側弯などの脊柱変形とかみ合わせの関係を調べた9研究・計1,424人を対象にしました。9件中8件で研究方法の質が低く、矯正治療が脊柱変形を改善する根拠は見つかりませんでした。対象は一般的な腰痛ではありません。この結果から「腰痛が治る」とも「必ず治らない」とも決められません。
矯正中は長い診療時間、食事量の変化、運動不足、仕事の姿勢などが重なることがあります。調整日と腰痛が近くても、それだけで因果関係を判断できません。
矯正歯科では歯並び、上下のかみ合わせ、顎の動きを評価します。腰の神経、骨、筋肉、内臓の病気を診断する診療科ではないため、腰痛は整形外科やかかりつけ医にも相談します。
「腰も痛くなる?」と感じたときの記録
いつ始まったか、姿勢や動作で変わるか、足のしびれ・力の入りにくさ、発熱、体重減少、転倒、排尿・排便の変化を記録します。矯正側は、装置調整日、顎の痛み、かみ合わせの急な変化も別に記録します。
腰痛が出たからとマウスピースを外したり、矯正を中断したりせず、矯正歯科には装置の管理を、医科には腰痛の診断を相談してください。
受診先と緊急性
| 状態 | 行動 | 伝えること |
|---|---|---|
| 腰痛に伴い、新たに両脚の脱力、股の感覚低下、尿が出ない・漏れる、便を漏らす | 119番 | 症状が始まった時刻と歩行・排尿の変化 |
| 事故後に動けない、突然の激痛と強い胸痛・腹痛がある | 119番 | 事故や痛みの状況 |
| 発熱、がん治療歴、ステロイド使用、理由のない体重減少を伴う腰痛 | 当日中に医科へ相談 | 既往歴、薬、発熱、痛みの始まり |
| 軽くても続く・繰り返す腰痛、仕事や睡眠への支障 | 数日以内に整形外科などへ受診相談 | 続いた日数、動作との関係、足の症状 |
| かみ合わせや装置の急な変化 | 担当矯正歯科へ連絡 | 装置調整日、歯と顎の変化 |
脚の感覚や排尿・排便の急な変化は、腰の神経が圧迫される緊急疾患の可能性があります。歯科の予約を待たずに救急へ伝えてください。
まとめ:腰痛を矯正の効果判定に使わない
腰痛の変化だけで矯正が成功・失敗したとは判断できません。歯科ではかみ合わせの治療目標を確認し、腰痛は症状と危険信号を医科で評価してもらいましょう。不可逆的な歯の処置を腰痛目的で受ける前には、根拠と代替案を確認してください。
参考情報
参考
Spinal deformity and malocclusion association is not supported by high-quality studies: results from a systematic review of the literature(Eur Spine J, 2019)PubMed
参考
腰痛厚生労働省eJIM
参考
Back pain(救急受診が必要な症状)NHS
参考
Cauda equina syndromeNorth Bristol NHS Trust
参考
こんな時は迷わず119へ厚生労働省


