血液を固まりにくくする薬を飲んでいても、歯列矯正のすべての処置を一律に避けるわけではありません。装置を調整する日と、歯を抜く日では、出血への備えが違います。抜歯が決まっても、自分の判断で薬を止めないでください。
血管の中で血の塊ができるのを防ぐ薬には、抗凝固薬と抗血小板薬があります。ここでは、これらの薬を服用しながら矯正を考えるときの確認事項を扱います。薬ごとの休薬日数を決める記事ではありません。
「矯正の日」に何をするかを分ける
英国の歯科診療指針SDCEPは、一般的な矯正装置の装着・調整を、出血を起こしにくい処置に分類しています。一方、抜歯では傷ができるため、抜く歯の数や処置の難しさも確認します。日本で受ける具体的な処置は担当歯科医に尋ねてください。
| 予約の内容 | 事前に聞くこと |
|---|---|
| 一般的な装置の装着・調整 | 今回は調整だけか、歯ぐきに傷を作る処置もあるか |
| 矯正のための抜歯 | 本数、傷の大きさ、止血の方法、処方医への照会が必要か |
| 歯ぐきを切る手術など | 手術担当者は誰か、薬の指示をいつ・どこから受けるか |
表は自分で出血リスクを判定するためのものではありません。矯正歯科と抜歯を行う医院が別の場合は、両方へ同じ薬の情報を渡します。
出血が心配でも、薬を先に止めない
抗血栓薬は、脳や心臓などの血管が詰まる病気の予防・治療のために使われます。出血への心配だけで休薬すると、薬で防いでいる病気の危険が増す場合があります。
日本の「抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン2025年版」も、出血と血栓の両方のリスクを考える必要性を示しています。薬を続けたまま抜歯する場合もあり、薬の種類、体の状態、抜歯方法を確認した医師・歯科医師が判断します。
予約票に「お薬については主治医に確認」とある場合も、飲み方は医療機関の指示を受けてから判断します。抜歯日までに、歯科から処方医へ照会してもらえるかを聞き、指示の受け取り方を決めましょう。
お薬手帳に加えて、出血した経験も伝える
初回相談には、薬の名前・量・飲む時間が分かるお薬手帳を持参します。市販の痛み止めやサプリメントも含め、使用中のものを伝えてください。「血液サラサラの薬」という呼び方だけでは、必要な確認を絞れません。
- 何の病気で薬を使っているか、処方している医療機関
- ほかの薬との併用、最近の薬の変更
- 過去の抜歯や手術で血が止まりにくかった経験
- 心臓の弁や血管の治療歴、腎臓・肝臓の病気
検査が必要かも薬によって異なります。ほかの人が受けた血液検査や休薬方法を自分に当てはめず、抜歯担当者に「追加で必要な検査はありますか」と確認してください。
抜歯前に、飲み方と連絡先を書面で残す
薬の変更が必要と判断された場合は、対象の薬、最後に飲む日時、再開する日時を一組で聞きます。説明が食い違う、または再開の指示が分からない場合は、変更する前に抜歯担当者へ連絡し、処方医と確認してもらってください。
抜歯後の止血の手順と、血が止まらないときの連絡先も受け取ります。帰宅後に指示された対応をしても出血が続く場合は、その日のうちに抜歯をした医療機関へ連絡してください。出血量が多く意識が遠のくなど全身の異常がある場合は119番です。
次の矯正相談では、まずお薬手帳を見せ、「この計画に抜歯や手術が含まれるか」「誰が処方医と連絡するか」を確かめると、準備が具体的になります。
参考情報
確認日:2026年9月9日。日本の2025年版ガイドラインは抜歯が対象です。SDCEPは英国の歯科診療指針(2022年第2版)です。薬の扱いは、実際に受ける処置と処方内容を確認した医師・歯科医師の指示に従ってください。
参考
抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン2025年版日本有病者歯科医療学会・日本口腔外科学会・日本老年歯科医学会
参考
Management of Dental Patients Taking Anticoagulants or Antiplatelet Drugs, 2nd Edition(2022)SDCEP
参考
Anticoagulant or Antiplatelet Medication and Your Dental TreatmentSDCEP
参考
こんな時は迷わず119へ厚生労働省


