てんかんの診断だけで、歯列矯正ができるかどうかは決まりません。発作の種類や起こり方、治療中の薬、口の中の状態を確認し、てんかんを診ている医師と矯正歯科で計画を共有します。
英国矯正歯科学会(BOS)は、発作がよく管理されている人では固定式装置による治療が可能な場合がある一方、発作に伴う口のけがや、取り外し式装置の脱落に注意が必要としています。「固定式なら安全」「マウスピースなら無理」と一律に考えないことが大切です。
初診で共有したいのは、発作の名前と実際の様子
本人が発作中の様子を覚えていないこともあります。分かる範囲で発作の記録を持参し、家族などが見た情報も共有してください。新たに危険な状況で撮影する必要はありません。
| 項目 | 伝える内容 |
|---|---|
| 最近の経過 | 最後の発作の日、頻度の変化、薬を変更した時期 |
| 発作の様子 | 意識や体の動き、続く時間、口をかんだ経験 |
| 対応の計画 | 主治医から受けている指示、連絡先、処方された発作時の薬の有無 |
日本てんかん協会も、発作の時間や前後の状況を記録することが診療に役立つと説明しています。分からない項目は推測で埋めず、主治医へ確認する項目として残します。
装置選びでは、外れる可能性と口への当たり方を確認する
取り外し式装置は、発作時に外れて口の中を傷つけたり、気道へ入ったりする危険を考慮します。一方、固定式装置も唇や頬に触れるため、発作時のけがを完全に防ぐものではありません。担当医は、発作の経過に加え、装置の固定のしかたや必要な歯の移動を検討します。
診察では「この装置が外れにくいように何を確認するか」「発作後に装置の破損が疑われたら、どこへ連絡するか」を聞いてください。治療後に使う保定装置についても、開始前から相談しておくとよいでしょう。
ここでいう装置選択は、診療前の計画の話です。発作が起きている最中に、家族が口をこじ開けて装置を外すことではありません。
薬と検査の変更を、矯正歯科にも知らせる
お薬手帳を見せながら、薬の名前、量、飲む時刻を伝えます。歯科で新しい薬を処方されるときは、てんかんの薬との組み合わせも確認を受けます。矯正を理由に自分で薬を減らすことはしません。
BOSの資料は、てんかんに使う一部の薬で歯ぐきが増えるなど、口の中への影響があり得ることも挙げています。歯ぐきが厚くなった、磨きにくい場所が増えたと気づいたら、次回の矯正診察で変化した場所と時期を伝えます。すべての薬で同じ変化が起こるわけではありません。
脳のMRIを予定した場合は、検査の予約時に矯正装置があることを検査担当者へ知らせます。外す必要があるかは検査部位・装置・撮影条件によるため、矯正歯科と検査施設で確認してもらいます。
発作時は口へ物を入れず、決めてある対応を取る
日本てんかん協会は、発作中に体を押さえつけたり、口を無理に開けて物を入れたりしないよう案内しています。意識が十分に戻らない間に、水や飲み薬を飲ませることも避けます。発作時の薬を処方されている場合は、主治医から受けた個別の指示に従ってください。
1回のけいれんが5分以上続いて止まらない、意識が回復しないまま発作を繰り返す、または意識の曇る発作が短い間隔で繰り返す場合は119番へ連絡します。
通院中の対応も、その場で初めて相談するのではなく、初診時に主治医の指示を見せて共有しておきます。発作の経過が変わったときは、次の処置前に矯正歯科へ知らせてください。
参考情報
確認日:2026年9月9日。BOSの文書は2021年のものです。本人の発作の経過と現在の治療を、主治医と矯正歯科で共有して判断する必要があります。
参考
Orthodontics in patients with significant medical comorbidities(2021年、Epilepsyの項)British Orthodontic Society
参考
発作の介助と観察日本てんかん協会
参考
診断と治療日本てんかん協会


