子どもの上の前歯が片方だけ生えてこないときは、「何歳だから待って大丈夫」と年齢だけで決めず、反対側がいつ生えたか、どの順番で生えているかを歯科で確認してもらいましょう。ここでは、上の真ん中に並ぶ永久歯である上顎中切歯(じょうがくちゅうせっし)を主に扱います。
生えていないことだけでは、歯がないのか、途中で止まっているのかは分かりません。痛みがなくても左右差に気づいたら、小児歯科や一般歯科へ通常の予約を取り、反対側の歯が生えた時期を伝えてください。
片方が生えてからの期間と、生える順番を見る
英国王立外科医師会の2022年版の指針は、上の永久前歯の生え方を詳しく調べる目安として、次の状況を挙げています。
- 反対側の同じ前歯が生えてから、6か月を超えても生えてこない
- 下の永久前歯が生えてから、1年を超えても上の永久前歯が生えてこない
- 真ん中の前歯より、その隣の永久歯が先に生えるなど、順番が大きく違う
これは英国の指針が示す評価の目安であり、「6か月までは受診せず待つ」という期限ではありません。左右差が気になる、以前のけががあるなどの場合は、その時点で相談できます。日付が不明なら、写真で初めて歯が見えた月など、おおよその情報で構いません。
幼児期に乳歯をぶつけた経験も伝える
上の乳前歯へのけがが、後から生える永久歯の形や生え方に関係することがあります。今は痛くなくても、乳歯が歯ぐきへ押し込まれた、抜けた、位置が変わったなどの経験を、診察時に伝えてください。
いつ、どこを、どのようにぶつけたかが分かれば十分です。当時の写真や受診先の記録があれば持参できます。ただし、けがの経験だけで今の生え方の原因が決まるわけではありません。保護者が記憶をたどって自分を責めたり、ぶつけたことがないから異常はないと考えたりする必要はありません。
歯がある場所と、生えるための空間を調べる
診察では、乳歯が残っているか、隣の歯が傾いて場所を狭くしていないか、歯ぐきに膨らみがあるかなどを確認します。必要なX線検査で、永久歯があるか、向きや根の形、途中で妨げているものがないかを調べます。
妨げになる例として、本来の本数より多い歯や、歯の組織がまとまってできる歯牙腫(しがしゅ)などがあります。ただし、これらが必ず見つかるわけではありません。写真だけで原因を決めたり、残っている乳歯を自分で抜いたりしないでください。
CTが全員に必要なわけでもありません。通常の画像で分かることと、治療方針を決めるために追加で必要な情報を歯科医師が考え、撮影方法を選びます。
「様子を見る」なら、次の診察で比べることを決める
歯が生える場所を確保したり、妨げになるものを取り除いたりした後に、生える経過をみる場合があります。一方、歯ぐきなどを開いて歯に装置を付け、矯正で引き出す処置が必要になる場合もあります。後者を牽引(けんいん)といいます。歯の位置や根の形が違うため、待つ期間と処置の順番は一人ずつ決まります。
経過観察になったときは、その診察で「次はいつ来るか」「前回と何を比べるか」「どの変化がなければ方針を見直すか」を聞いておきましょう。診察のたびにX線を撮るとは限らず、画像が必要かは確認したい変化と治療判断によって決まります。
受診前には、左右の前歯が見え始めた時期と、乳歯が抜けた時期を一枚のメモにしてみてください。その記録と過去のけがの情報が、次の判断を助けます。
参考情報
確認日:2026年9月7日。英国王立外科医師会の2022年改訂指針などを参照しています。治療に関する根拠には、過去の症例を調べた研究などが多く含まれ、全員に同じ処置や待機期間を当てはめることはできません。
参考
Management of Unerupted Maxillary Incisors(2022年改訂)Royal College of Surgeons of England
参考
Eruption disturbances in the mixed dentition: orthodontic considerations for primary dental care|Australian Dental Journal. 2022;67(Suppl 1):S14–S23. DOI:10.1111/adj.12931PubMed Central


