鋏状咬合(はさみじょうこうごう)は、上の奥歯が下の奥歯より大きく外側へずれ、上下のかむ面がうまく合わないかみ合わせです。シザースバイトとも呼ばれます。歯の横の面どうしが触れることもあれば、ほとんど触れずにすれ違うこともあります。
一本だけで起きる場合と、片側や両側の複数の奥歯で起きる場合では、必要な治療が違います。「奥歯が外に出ている」という見た目だけで、装置や手術の必要性は決まりません。
上の奥歯が内側に入る交叉咬合とは、ずれる向きが違う
上の奥歯が下の奥歯より内側に入る型の交叉咬合では、通常と内外の関係が逆になります。一方、鋏状咬合は上の奥歯が大きく外側、下の奥歯が内側という関係になり、かむ面が横にすれ違います。
この違いは、広げる場所を考えるうえで重要です。「奥歯のかみ合わせが悪いから上あごを広げる」と一律には決められません。診察では、鏡や歯型を使って、どの歯がどの方向へずれているかを示してもらいましょう。
上の奥歯が内側に入る型と、かむ途中の顎の横ずれについては、次の記事で説明しています。
歯の傾き、上下の幅、かむ面の高さを調べる
鋏状咬合の治療例では、奥歯の傾きだけでなく、上下の歯列の幅や歯の高さも検討されています。歯列は、歯が弓状に並んだ列のことです。上の歯列が広いのか、下の歯列が狭いのか、歯の傾きが重なっているのかを分けて評価します。
また、歯を横へ動かそうとしたときに、反対側の顎の歯とぶつかる位置関係かも確認します。歯の表面だけを見て「内側へ倒せば治る」と考えず、歯の根をどこへ動かすかも含めた治療計画が必要です。
相談では、「一本の傾きが中心なのか、複数の歯や顎の幅も関係するのか」「歯がぶつからず動けるように、かみ合わせの高さを調整する必要があるか」を質問してみてください。
マウスピースだけで治る?手術が必要?
装置名だけでは答えが出ません。2023年の論文には、12歳の女児一人にマウスピース型装置を使った治療例が報告されています。また、東京歯科大学の2011年の報告では、9歳2か月の男児の両側の鋏状咬合に対し、上の歯列の幅を狭め、下の歯列の幅を広げる目的で複数の装置を使っています。
これらは特定の患者の症例報告です。子ども全員への効果や治療期間、成人で手術を避けられる割合は示しません。成人や歯列全体に大きなずれがある場合には、歯を動かす範囲と、顎の骨に対する治療が必要かを分けて説明してもらいます。
治療案を比べる際は、装置が目立つかどうかに加え、「どの歯の傾きと幅を変える計画か」「かむ面が接触するようになる見込み」「治療後に安定しているかをどう確かめるか」を聞きましょう。成功例の写真だけでは、自分に同じ方法が使えるとは判断できません。
痛みがなくても、すれ違いに気づいたら相談する
奥歯が片側でかめない、食べ物をすりつぶしにくい、歯科健診で鋏状咬合を指摘された場合は、一般歯科または矯正歯科へ通常の予約を取ってください。子どもでは、今ある歯だけでなく、生え替わりと成長も含めて評価します。
診察には、いつから気になったか、左右どちらでかみにくいか、以前の矯正歴を整理して持参すると役立ちます。見た目の左右差だけを目標にせず、上下の奥歯でどう食べ物をかめるようにするかを相談しましょう。
参考情報
確認日:2026年9月7日。以下は成長期の患者を扱う症例報告です。成長期の少数の治療例から、成人の治療法や必要な期間を予測することはできません。
参考
Scissor Bite in Growing Patients: Case Report Treated with Clear Aligners|Children. 2023;10(4):624. DOI:10.3390/children10040624PubMed Central
参考
A Case Report of Bilateral Brodie Bite in Early Mixed Dentition Using Bonded Constriction Quad-helix Appliance|The Bulletin of Tokyo Dental College. 2011;52(1):39–46. DOI:10.2209/tdcpublication.52.39J-STAGE


