血友病があっても、病名だけで矯正治療ができないと決まるわけではありません。ただし、抜歯など出血を伴う処置は、血液内科と歯科で止血の計画を立ててから行います。歯を動かす計画と、口の中に傷を作らない工夫の両方が大切です。
血液内科の診療情報を矯正歯科にも伝える
血友病は、血を固める働きを持つたんぱく質が不足したり、十分に働かなかったりする病気です。このたんぱく質を「凝固因子」といいます。ここでは、先天性の血友病A・Bがある人の矯正相談を扱います。血栓を防ぐ薬を飲んでいる場合とは、出血への備えが異なります。
矯正歯科の初診では、血友病を診てもらっている医療機関と現在の治療を伝えてください。過去に抜歯後の出血が長く続いた経験も、処置の準備に関わります。
| 項目 | 歯科へ伝える内容 |
|---|---|
| 現在の治療 | 血友病の型、使っている薬、血液内科から受けている指示 |
| これまでの出血 | 抜歯や口のけがで血が止まりにくかった経験と、そのときの処置 |
| 診療先 | 血液内科の医療機関名と、歯科から情報を問い合わせる窓口 |
抜歯日より先に止血の計画を決める
世界血友病連盟の2020年版ガイドラインは、抜歯など口の中の手術を、血液内科と相談して作る個別の止血計画のもとで行うよう勧めています。必要な薬や処置は、血友病の状態と歯科で行う処置によって変わります。
抜歯を提案されたら、矯正歯科に「どの歯を何本抜く予定か」「抜歯を担当する医療機関はどこか」を聞きましょう。その情報を使い、歯科と血液内科で、処置前後の治療と出血時の対応を決めます。普段の薬を自分で増減して備えることは避けてください。
歯科の局所麻酔も、注射する場所や方法によって出血への配慮が変わります。麻酔をすべて避けるのではなく、抜歯前に、担当の歯科医へ麻酔方法を含めて血液内科と共有しているか尋ねてください。
装置が当たる傷をそのままにしない
矯正中は、装置が頬や唇に当たる部分と、歯磨きのしやすさにも配慮します。英国矯正歯科学会の医療上の配慮が必要な患者を診る医療者向け資料では、血友病がある場合、装置による傷を避けることと口の中を清潔に保つことが重視されています。
装置を選ぶ際は、取り外せるかどうかだけで決めず、当たりやすい場所、清掃方法、傷ができたときの調整方法を聞いてください。ワイヤーが刺さるときは、矯正歯科へその日のうちに連絡し、血友病があることを添えて調整の時期を相談します。自分でワイヤーを切って直そうとしないでください。口の傷からの出血が止血の指示に従っても続く場合は、血液内科の指定窓口へ直ちに連絡してください。
抜歯後の出血は、事前に決めた窓口へ連絡する
抜歯前に、血が止まらないときの連絡先と、夜間・休診日の受診先を確認しておきましょう。帰宅後に出血が長引く場合は、渡された止血の指示に従いながら、処置をした歯科または血液内科の指定窓口へ直ちに連絡します。連絡がつかず出血が続く場合は、救急外来を受診してください。
息が苦しい、意識がはっきりしない状態では119番へ連絡します。こうした症状があるときは、通常の予約日を待つ場面ではありません。
資料確認日:2026年10月9日。


