歯列矯正で歯や口元の位置が変わると、横顔や顎まわりの見え方が変化することはあります。ただし、二重顎そのものを治す治療ではなく、必ず改善するわけではありません。
脂肪、皮膚のたるみ、首の形、姿勢などが主な原因なら、歯を動かしても期待した変化が出ないことがあります。見た目だけで原因を決めず、歯並び・かみ合わせ・顎の骨格を検査したうえで、治療目標を確認することが大切です。
二重顎と歯並びはどう関係する?
二重顎は、顎の下にふくらみや影ができ、顎の輪郭が二重に見える状態を指す一般的な表現です。原因は一つとは限りません。
| 考えられる要因 | 歯列矯正との関係 |
|---|---|
| 歯や口元の前後的位置 | 歯の移動に伴って唇や顎周辺の軟らかい組織の見え方が変わる場合があります。 |
| 上顎・下顎の骨格 | 骨格差が大きい場合、歯だけを動かす治療では限界があり、顎矯正手術を含む検討が必要なことがあります。 |
| 顎下の脂肪や皮膚 | 歯列矯正では脂肪量や皮膚のたるみを直接減らせません。 |
| 首の形・頭の向き・姿勢 | 写真の角度や姿勢で見え方が変わります。歯列矯正だけで改善すると断定できません。 |
成人女性55人を調べた研究では、矯正前後で顎周辺の形態変化が認められた一方、治療前の状態から変化量を直接予測することは難しいと報告されています(参考文献1)。「この歯並びなら二重顎が必ず消える」とは言えません。
歯列矯正で見え方が変わる可能性があるケース
前歯や口元の突出を治療する場合
前歯の位置を後方へ動かす治療では、唇を含む顔の軟らかい組織が変化する場合があります。ただし、歯の移動量と見た目の変化は一対一ではなく、年齢、皮膚・筋肉の厚み、骨格、治療方法などの影響を受けます。
抜歯を伴う矯正治療後の顔貌変化を調べた研究でも、唇や周辺組織の変化には個人差がありました(参考文献3)。抜歯をすれば顎のラインが細くなる、という意味ではありません。
顎の骨格差が見た目に関係する場合
下顎が小さい・後方にあるなど、顎の骨格が横顔に影響している場合があります。成長が終わった成人では、通常の歯列矯正は主に歯を動かす治療であり、顎の骨そのものを大きく前へ移動させる治療ではありません。
骨格差が大きい場合は、歯の傾きでかみ合わせを整える「カモフラージュ治療」と、顎の骨を移動する顎矯正手術を組み合わせる治療で、得られる横顔の変化が異なります(参考文献2)。適応は検査と診断で決まります。
矯正だけでは変えにくいケース
- 顎下の脂肪が主な要因
- 皮膚のたるみや加齢変化が主な要因
- 首の形や写真の角度による見え方が大きい
- 歯並び・かみ合わせに治療上の問題がない
歯列矯正の必要性は、二重顎の見た目だけでは判断できません。美容面の希望と、歯科治療として改善できる範囲を分けて説明してもらいましょう。
ワイヤー矯正とマウスピース矯正で差はある?
装置の名前だけで、二重顎やフェイスラインへの効果を比較することはできません。重要なのは、診断された問題に対して、どの歯をどこへ動かし、かみ合わせをどう整える計画なのかです。
- ワイヤー矯正:歯にブラケットとワイヤーを付けて動かします。対応範囲は症例によって異なります。
- マウスピース型矯正:透明な装置を交換して歯を動かします。取り外せますが、適応の判断と指示された装着時間の管理が必要です。
どちらを選んでも、脂肪や皮膚を直接治療するものではありません。「マウスピースを付けるだけで小顔になる」など、治療計画を示さない説明には注意してください。
相談時に確認したいこと
自己流の「顎トレーニング」は必要?
舌や顎へ強い力をかける自己流の方法で、成人の顎の骨格や顔の形を安全に変えられるという十分な根拠はありません。米国矯正歯科学会も、いわゆる「ミューイング」で歯や顎の位置が意図せず変わり、かみ合わせなどに問題が起こる可能性を注意喚起しています(参考文献4)。
痛みを伴う顎押し、器具の使用、強い力での舌トレーニングを自己判断で行わないでください。姿勢や顎の動きに症状がある場合は、歯科医師や医師へ相談します。
よくある質問
歯列矯正で二重顎は治りますか?
治るとは断定できません。歯や顎の位置に関連した見え方が変わる場合はありますが、脂肪や皮膚などが原因なら矯正だけでは変えにくいです。
抜歯矯正なら顎のラインが細くなりますか?
抜歯の有無だけでは決まりません。抜歯は歯を並べる空間や口元などを含めて診断するもので、輪郭を細くするために一律に選ぶ治療ではありません。
下顎が小さい場合、マウスピースで前に出せますか?
成人の顎の骨格を大きく移動する治療と、歯を動かす治療は別です。年齢、骨格差、かみ合わせにより選択肢が異なるため、矯正歯科で検査を受けてください。
二重顎が気になることを矯正相談で伝えるときは、横顔の見た目だけでなく、かみにくさや口の閉じにくさも伝えます。歯、顎の骨格、脂肪・皮膚のどれが関係し、歯科治療で変えられる範囲はどこまでかを分けて説明してもらいましょう。
顔貌変化について確認した研究
参考文献1
参考
Changes in chin morphology after orthodontic treatmentPubMed
参考文献2
参考
Facial profile changes after orthodontic camouflage versus orthognathic surgeryPubMed
参考文献3
参考
Facial soft-tissue changes after premolar extraction orthodontic treatmentPubMed
参考文献4
参考
Is Mewing Bad For You?American Association of Orthodontists

