歯がない場所を補う方法には、人工の歯を入れる以外に、自分の別の場所にある歯を手術で移す「自家歯牙移植」があります。歯を移した後に矯正で位置を整えることも検討できますが、使える歯と移す場所の条件がそろう必要があります。
ここでは、予定を立てて行う歯の移植と矯正について説明します。事故などで抜けた歯を元の場所へ戻す応急対応とは異なります。
使える歯があるだけでは、移植は決まらない
英国矯正歯科学会(BOS)の助言書は、歯を失った場合や、残すことが難しい歯がある場合の選択肢として移植を挙げています。たとえば、矯正で抜く計画の小臼歯(犬歯の後ろにある歯)を、別の場所へ使う治療です。
診察では、移す歯の根の形や成長段階と、受け入れる場所の骨や幅を調べます。歯の根を包み、骨との間で支える薄い組織を歯根膜といい、これを保つことも重要です。親知らずなど余って見える歯があっても、形や抜き方の難しさによって使えないことがあります。
移植した歯を矯正で動かせるか
歯の移植と、その後の矯正を調べた2020年の研究まとめでは、組み合わせた治療の経過が報告されています。一方、歯の根が短くなる歯根吸収なども評価されており、「移植すれば普通の歯と同じように必ず動く」とは保証できません。
また、歯の根と骨が直接くっつく骨性癒着が起こると、矯正で動かすうえで問題になります。担当医は、移植後の治り方やレントゲン所見を見て、動かせるか、いつ始めるかを判断します。
研究では対象や方法に違いがあり、誰でも同じ結果になるとは限りません。移植から矯正までの待ち時間も、一律の日数では決められません。
手術・矯正・歯の形を整える治療を一つの計画にする
移植は、歯を移す手術で終わりではありません。歯の種類によって形が違うため、位置を整えた後に見た目やかみ合わせを調整する治療を検討します。歯の内部の神経や血管の状態によっては、根の中の治療も必要です。
| 相談する内容 | 担当者と共有したいこと |
|---|---|
| どの歯を使うか | 矯正担当と手術担当で、抜く歯と残す歯の計画が一致しているか |
| いつ矯正で動かすか | 手術後の診察結果を、誰が矯正担当へ伝えるか |
| 形をどう仕上げるか | 材料を足す・被せる処置が必要か、矯正とどの順番で行うか |
| 治療後の管理 | 移植した歯の状態をどの医院が追い、問題が出たときはどこへ連絡するか |
相談先は、まず現在の歯科または矯正歯科です。「移植も比較したい」と伝え、手術を担当できる歯科・口腔外科との連携が必要かを尋ねてください。移植する案だけでなく、矯正ですき間を閉じる案など、自分の状態で選べる方法も並べて説明してもらいましょう。
参考情報
確認日:2026年8月26日。BOS資料は英国の助言書です。
参考
Tooth Autotransplantation(本文記載2022年)英国矯正歯科学会
参考
Effect of Orthodontic Treatment on Tooth Autotransplantation(2020年)European Journal of Dentistry


