しゃくれの改善と矯正治療のリスクを徹底解説

しゃくれの改善と矯正治療を徹底解説

しゃくれとは何か?その原因と影響

しゃくれは、正式名称を下顎前突(かがくぜんとつ)といい、下顎が前に突出することで横顔の輪郭や噛み合わせ、発音にさまざまな影響を及ぼす状態を指します。単に見た目の問題にとどまらず、場合によっては食事のしにくさや発音障害、顎関節への負担など、多角的なトラブルの原因となることがあります。しゃくれが起こる原因としては、遺伝的な骨格の問題、成長期における骨の発達バランスの乱れ、歯並びや噛み合わせの異常など多岐にわたると言われています。

顎変形症の一種「下顎前突(かがくぜんとつ)」

顎変形症の一種「下顎前突(かがくぜんとつ)」

これらの要因のうち、遺伝要素が強いケースも多く、自分の意志では変えられない部分があるのも事実です。しかし矯正治療を中心とした歯科的アプローチによって、症状を軽減したり、見た目と機能の両面から改善を図ることは十分可能です。特に、早期のうちから矯正治療を行うことで、骨格的な問題が固定化する前に対処できることもあり、成人だけでなく成長期のお子さんにも重要視されています。

また、顎の位置がずれることで、顎関節への負担が増える場合もあります。顎関節は咀嚼をはじめとした日常生活の動作に深く関わる部位ですから、しゃくれを放置すると、顎関節症状や頭痛、肩こり、さらには全身への影響が生じる可能性も考えられます。こうしたリスクを踏まえると、しゃくれを含む不正咬合の早期発見と治療は、より快適な生活を送るために大切な要素といえるでしょう。

歯科医院の矯正治療では、ワイヤー矯正やマウスピース型矯正など、多種多様な方法が用意されており、患者さん一人ひとりの骨格や歯並びの状態、生活スタイルに合わせて最適なプランを提案してもらうことが可能です。なかでもマウスピース型矯正(インビザラインなど)は透明なマウスピースを装着して少しずつ歯を動かす方法で、見た目のストレスが少ないとされています。ワイヤー矯正に比べて目立ちにくいメリットは大きいですが、顎の骨格の調整が必要なケースや下顎前突が重度の場合は、場合によっては他の矯正方法や外科治療との併用が検討されることも珍しくありません。

しゃくれが引き起こす可能性のある問題

  • 横顔のバランスが崩れ、コンプレックスにつながる
  • 噛み合わせが悪く、食事や発音に支障が出る場合がある
  • 顎関節に負担がかかり、顎関節症や頭痛に悩まされるリスク
  • 成長期における骨格形成に影響し、成人後に治療が長引く可能性

上記のようにしゃくれの影響は多方面におよびますが、現代の歯科医療では状況に応じて様々な治療法が選択できるため、早めの相談がカギとなります。

しゃくれの改善は矯正治療で可能なのか?

しゃくれの改善を目指すうえで、多くの方が最初に気になるのが「本当に矯正治療で治せるのか」という点でしょう。結論から言うと、軽度〜中度の下顎前突であれば、多くの場合は矯正治療だけでも改善が期待できます。矯正治療による歯の位置調整で見た目を整えると同時に、噛み合わせが適正になることで、顎の動きや咀嚼機能のバランスが向上するケースも少なくありません。

一方、重度の下顎前突や骨格的な異常が顕著な場合は、外科的な手術と矯正治療を組み合わせることもあります。たとえば、顎変形症の手術などで下顎の骨を後方へ移動させる方法です。これは通院先の歯科医師や口腔外科医の判断によって決定されますが、手術を伴うため入院や費用の面で負担が大きくなりがちです。しかし、術後は顎の骨そのものが正しい位置に近づくので、抜本的な改善を期待できる利点もあります。

どのような治療法を選択するにせよ、最初は歯科医院でカウンセリングを受け、精密検査を経て自分の顎や歯の状態を正しく把握することが大切です。そのうえで、担当医が提案する治療プランをもとに、費用や期間、通院頻度、日常生活への影響などを総合的に考慮しながら、自分に最適な方法を選びましょう。

マウスピース型矯正が注目される理由

近年、マウスピース型矯正(インビザラインなど)は「目立ちにくい」「取り外しができて衛生的」といったメリットから、多くの方に選ばれる矯正治療法として定着してきています。特に、社会人の方や人前に立つ機会が多い方にとって、矯正装置が周囲に気づかれにくいという点は大きな魅力と言えるでしょう。また、歯磨きのときにマウスピースを外してしっかりケアできるため、矯正期間中の虫歯リスクを軽減しやすい点も優れています。

ただし、マウスピース型矯正はワイヤー矯正より適用範囲が限られるケースがあるのも事実です。歯並びの乱れが大きい方や、顎の骨格に関わる不正咬合の場合は、より強力に歯を動かす必要があるため、ワイヤー矯正を推奨されることもあります。したがって、外科手術の要否も含め、どの矯正装置が適切かは担当医の見解が重要になります。

矯正治療では、歯並びや咬み合わせを改善することで顔全体の印象に変化が現れる場合があります。しかし人によっては、そこに過大な期待を寄せすぎてしまうケースがあるようです。矯正治療によって得られる効果は確かに大きいものの、あくまでも自然に近い形で歯と顎の位置を整えていくのが基本になります。劇的に輪郭が変わるような「整形的」な効果を期待するなら、外科手術も視野に入れる必要があるという点を理解しておくと良いでしょう。

しゃくれ改善と矯正治療におけるリスク・注意点

矯正治療は多くの恩恵をもたらしてくれる一方で、リスクや注意点も無視できません。正しい知識を持ったうえで治療を始めることで、治療期間中のトラブルを最小限に抑えられます。以下では一般的なリスクや注意点について詳しく解説します。

治療中に感じる痛みや違和感

矯正装置を装着した直後は、歯が動くことによる圧迫感や痛みを感じることがあります。これは歯や歯茎、顎が矯正力に慣れるまでの一時的な反応です。通常は数日〜1週間ほどで慣れるケースがほとんどですが、痛みが強い場合には我慢をせず歯科医院に相談しましょう。適切な処置やアドバイスを受けられるはずです。

装置のブラケットやワイヤーが口内の粘膜を刺激し、口内炎を引き起こすケースもあります。口腔内が敏感な方は特に注意が必要ですが、保護ワックスを使うことで負担を軽減することが可能です。マウスピース型矯正の場合は、装置の違和感が比較的少ないとされていますが、まったくないわけではありません。マウスピースの境目が舌や頬の内側に当たって口内炎を起こすこともあります。

虫歯や歯肉炎、歯周病のリスク増加

矯正装置が口内にあると、どうしても歯磨きが難しくなります。ワイヤーの周りやブラケットの隙間に食べかすが溜まりやすくなるため、虫歯や歯肉炎、歯周病などのリスクが高まりやすいのです。特にワイヤー矯正では、通常の歯ブラシだけでは磨き残しが多くなるため、デンタルフロスや歯間ブラシなどを使った入念なケアが求められます。

マウスピース型矯正であれば、装置を外していつもどおり歯磨きやフロスができる分、虫歯のリスクは軽減されると考えられます。しかし装着時間を守らないでいると、矯正の効果がなかなか得られず、結果的に治療期間が延びてしまうことも。いずれにせよ「日々のケア」が重要になる点は変わりありません。

注意

矯正装置を装着中に磨き残しが続くと、虫歯や歯肉の炎症が悪化して矯正治療がスムーズに進まないリスクがあります。トラブルを防ぐためにも、担当医の指導のもと、正しいケア方法をしっかりマスターしましょう。

歯並びの後戻りリスクと保定装置の重要性

矯正治療が終了しても、歯は元の位置に戻ろうとする性質(後戻り)を持っています。そのため、保定装置(リテーナー)を一定期間以上装着し、歯と顎の安定をサポートする必要があります。保定を怠ると、せっかく整った歯並びが元に戻ってしまい、再治療が必要になるケースもあるので注意が必要です。保定装置の装着期間は個人差がありますが、医師の指示に従うことが良好な結果を維持するカギと言えます。

医薬品副作用被害救済制度の対象外の場合がある

使用する矯正装置の種類によっては、医薬品副作用被害救済制度の適用外となる場合があります。通常のワイヤー矯正やマウスピース矯正は歯科医療機器として扱われますが、改造した装置や特殊な素材を用いた装置など、分類によっては対象外となる可能性があるため、事前に歯科医院でしっかりと説明を受けましょう。

しゃくれに対する具体的な矯正治療オプション

しゃくれを矯正治療によって改善する際には、以下のような矯正オプションが一般的に検討されます。噛み合わせや骨格の状態、さらには治療期間や費用も考慮しながら最適な方法を選ぶことが重要です。

ワイヤー矯正

古くから行われている実績ある矯正方法です。ブラケットとワイヤーを使って歯を段階的に動かし、顎の位置や歯列全体を理想的なかみ合わせへと導きます。歯並びが大きく乱れている場合や、強い力を必要とするケースでも対応可能なため、幅広い症例に向いています。その一方で、装置が目立つというデメリットがあるのも事実です。

マウスピース型矯正(インビザラインなど)

透明なマウスピースを装着し、定期的に新しいマウスピースに交換して歯を少しずつ動かしていく矯正方法です。見た目が自然なうえ、食事や歯磨きの際にマウスピースを取り外せる点が大きな強みです。特にインビザラインは臨床例も多く、軽度〜中度の不正咬合に適していると言われています。ただし、取り外せるからこそ装着時間の自己管理が甘くなると、思うように効果が出ないリスクも伴います。

インビザライン
費用
(3.5)
見た目
(4.0)
期間
(5.0)
痛み
(2.0)
歯磨きのしやすさ
(4.5)
総合評価
(4.5)

上記のように、マウスピース型矯正は目立ちにくい利点や歯磨きのしやすさがある一方、痛みに関しては人によって感じ方が異なります。ワイヤー矯正と比べると痛みは少ないと感じる方が多いようですが、それでも歯を動かす以上まったくの無痛ではない点に留意が必要でしょう。

セラミック矯正

セラミック矯正は、歯の表面を削り、セラミックで作られた被せ物を装着することで、見た目の歯並びを短期間で整える方法です。ただし、あくまで歯の形態を変えて並びをそろえるための施術であり、骨格的な下顎前突の改善には必ずしも適していません。噛み合わせの大幅な調整を要するケースでは効果が限定的になるため、しゃくれを根本から治したい場合には矯正専門の治療や外科的アプローチが検討されることが多いです。

矯正治療のステップと流れ

ここでは、しゃくれの改善も含めた一般的な矯正治療のステップを紹介します。どの方法を選ぶにしても、基本的な流れは共通しており、歯科医院での詳細な説明に加え、患者さん自身がしっかりと手順を理解しておくことが重要です。

STEP.1
初診・カウンセリング
歯科医院にて、しゃくれの症状や治療目標、費用面などを含めて相談します。担当医が詳しく話を聞き、治療の方向性をざっくりと提案してくれます。
STEP.2
精密検査
レントゲン撮影や歯型の取得、口腔内写真などを行い、顎や歯の状態を正確に把握します。骨格的な問題も含め、必要であれば外科矯正の可能性なども検討されます。
STEP.3
治療計画の立案
精密検査の結果をもとに、最適な矯正方法や期間、費用を具体的に提案されます。患者さんのライフスタイルや要望を踏まえたうえで最終的な治療計画が決定します。
STEP.4
矯正装置の装着と調整
ワイヤーやマウスピースなど選んだ装置を装着し、定期的に歯科医院で調整を受けながら歯を動かしていきます。治療期間は症例によって異なりますが、1〜2年程度からそれ以上に及ぶこともあります。
STEP.5
保定期間
歯が望ましい位置に移動したら装置を外し、リテーナーを使って歯並びを安定させます。保定期間をしっかりと継続することが、後戻りの予防には欠かせません。

このように、矯正治療には時間と手間がかかります。しかし顎の骨格問題や歯並びの乱れを改善することで、機能面と審美面の両方でメリットを得られる可能性があるのが大きな魅力です。

矯正治療は長い道のりになるかもしれませんが、適切な治療計画のもとで継続的なフォローアップを受けることにより、理想に近い状態へと導けることが多いのも事実です。治療後の快適な噛み合わせや美しい歯並びを思い描きながら、計画的に進めていくことが大切でしょう。

銀座で働く現役歯科衛生士の木村さん

下顎が前に出ていると横顔やフェイスラインに影響が出るだけでなく、食事の噛み合わせなどにも不都合が生じやすいです。矯正治療によって改善できるケースは多いため、悩んでいる方はぜひ一度カウンセリングを受けてみることをおすすめします。特にマウスピース型矯正であれば、歯磨き時に装置を外せるため虫歯リスクを抑えやすい面もありますよ。

矯正治療に関するよくある質問

顎が痛むことはある?

矯正治療中は歯や顎に力がかかるため、顎に違和感を覚えることがあります。通常は装置の調整直後に痛みが出やすいですが、一定期間で慣れるケースが多いです。もし顎関節に強い痛みが続く場合は、早めに担当医に相談すると安心です。

しゃくれは遺伝するの?

骨格的な特性や噛み合わせの傾向は遺伝の影響を受ける場合があります。そのため、家族にしゃくれの症状を持つ方がいる場合は、自分も似た形の不正咬合を発症しやすい可能性が考えられます。しかし、必ず遺伝するわけではないので、気になる場合は専門医による早期の診断が大切です。

矯正治療が終わった後、顎のラインはどれくらい変化する?

顎の位置や歯並びが整うことで、横顔のプロファイルやフェイスラインに変化が見られる人が多いです。ただし、骨格的要因の強いケースでは外科手術を併用しない限り劇的な変化は期待できないこともあります。歯科医師と相談し、治療目標を明確にしておくとよいでしょう。

矯正中に虫歯になりやすいのは本当?

矯正装置の周りに食べかすが溜まりやすいため、通常よりも虫歯になりやすいのは事実です。特にワイヤー矯正の場合、歯磨きが難しくなる傾向があります。しかし、マウスピース型矯正なら装置を外して磨けるためリスクは軽減されます。いずれにせよ丁寧なブラッシングや定期検診が重要です。

矯正治療に年齢制限はある?

基本的に大人になってからでも矯正治療は可能です。成長期ほど歯や顎の動きは早くありませんが、適切な方法で時間をかければ十分に歯並びや噛み合わせを改善できます。年齢よりも歯や顎の健康状態や治療の目的に合った方法選択が重要です。

矯正費用はどのくらいかかる?

ワイヤー矯正やマウスピース型矯正、あるいは外科手術の有無によって大きく異なります。日本では保険適用外のケースが多いため、トータルで数十万円から100万円以上かかることもあります。支払い方法や分割払いの可否なども歯科医院によって異なるので、事前にしっかり確認しましょう。

まとめ

しゃくれの症状は、見た目や噛み合わせだけでなく、発音や顎関節への負担など多面的な影響を及ぼす可能性があります。原因は遺伝的な骨格や成長期の不均衡、歯列の乱れなど様々ですが、現代の歯科医療では矯正治療によって改善できるケースが多く存在します。軽度から中度の下顎前突であればワイヤー矯正やマウスピース型矯正によって十分に対応でき、重度の場合は外科手術を併用する選択肢も考えられます。

治療を検討する上で重要なのは、現在の顎や歯の状態を正しく理解し、プロの歯科医師としっかり相談することです。矯正治療は時間も費用もかかる大きな決断ですが、将来的な噛み合わせの安定や見た目の向上など、その恩恵は一生に及ぶ場合も少なくありません。また、矯正期間中は装置のお手入れや口腔ケアにより一層の注意が必要です。虫歯や歯周病リスクを抑えるために、歯科衛生士や医師からのアドバイスをしっかり実践することが大切です。

もし、しゃくれによる見た目や噛み合わせなどにお悩みを抱えている場合は、一度歯科医院でカウンセリングを受けてみることをおすすめします。担当医が精密検査を踏まえた治療計画を立ててくれるため、自分に最適な矯正方法を選びやすくなるでしょう。矯正治療は、正しい知識をもって臨むことで、より良い結果と充実した治療体験につながります。ぜひ前向きに情報を集め、理想的な口元と顎の位置を目指してみてください。