矯正でいう「4番抜歯」は、前歯の中央から数えて4番目にある第一小臼歯(だいいちしょうきゅうし)を抜き、歯を並べたり前歯を後ろへ動かしたりするための空間を作る方法です。
4番を抜くか、5番を抜くか、上下左右で何本抜くかは、混み具合だけでは決まりません。横顔、口の閉じやすさ、かみ合わせ、歯や歯ぐきの状態を調べます。必要な歯の移動量も比べて決めます。
「4番が一般的だから」という説明だけで決めず、抜歯しない方法と治療後の予測も確認しましょう。
4番の歯はどこ?
歯は、前歯の中央から奥へ向かって番号で呼ぶことがあります。
- 1番・2番:前歯
- 3番:犬歯(いわゆる八重歯になることがある歯)
- 4番:第一小臼歯
- 5番:第二小臼歯
- 6番・7番:大臼歯(奥歯)
4番と5番はどちらも、犬歯と大きな奥歯の間にある小臼歯です。「4番抜歯」は病名ではなく、どの歯を抜く計画かを示す呼び方です。
なぜ矯正で4番を抜くことがあるの?
顎の骨の上に歯を無理なく並べる場所が足りない場合は、何らかの方法で空間を作ります。日本矯正歯科学会の標準治療指針では、歯の大きさの合計と歯列の長さの差が大きい場合、抜歯を伴う治療は選択肢の一つとされています。
でこぼこの歯並びを整える空間を作る
歯が重なっている状態は「叢生(そうせい)」と呼ばれます。足りない空間が大きいと、歯列を広げたり歯の間を少し削ったりするだけでは不足する場合があります。
前歯を後ろへ動かす空間を作る
前歯の突出や口元の出方を改善する計画では、抜歯した空間を使って前歯を後方へ動かすことがあります。ただし、抜けば必ず希望どおりの横顔になるわけではありません。前歯の移動量、奥歯の動き、唇の厚み、骨格などが関係します。
上下のかみ合わせを整える
上の歯と下の歯の前後関係や左右差によって、上下4本ではなく上だけ2本、または別の組み合わせが検討されることもあります。左右で異なる計画には、正中(前歯の中心線)やかみ合わせを整える目的がある場合があります。
4番と5番は位置がどう違う?
| 比較 | 4番(第一小臼歯) | 5番(第二小臼歯) |
|---|---|---|
| 位置 | 犬歯のすぐ後ろ | 4番と大臼歯の間 |
| 空間ができる場所 | 前歯・犬歯に比較的近い | 奥歯に比較的近い |
| 検討材料 | 前歯と奥歯をどれだけ動かすか、虫歯・詰め物・根の状態、左右差、かみ合わせ、動かしたくない歯を支えにする方法など | |
「口元を下げたいなら必ず4番」「5番なら顔が変わらない」と単純には決められません。この資料で確認できるのは抜歯・非抜歯の一般的な判断であり、4番と5番の優劣ではありません。歯の位置と状態、前歯・奥歯の移動計画を診断時に確認してください。
なぜ上下左右4本を抜くことがあるの?
上顎と下顎の両方で空間が必要で、左右のバランスも保つ計画では、上下左右の第一小臼歯を計4本抜くことがあります。
上だけが強く前へ出ている、すでに失った歯がある、左右差がある場合は、本数や位置が変わることもあります。
2本なら軽い、4本なら重いという意味ではありません。大切なのは、抜いた空間をどの歯の移動に使い、最後にどのようなかみ合わせを目指すかです。
4番抜歯を決める前に必要な検査
- 口の中と歯ぐきの検査
- 歯並び・かみ合わせの写真
- 歯型または口腔内スキャン
- パノラマX線写真:歯全体、歯の根、埋まっている歯などを確認
- セファログラム:横顔の骨格、前歯の角度、顎の位置関係を分析
- 必要に応じたCTなどの追加検査
日本矯正歯科学会は、抜歯・非抜歯の判断では、頭部X線規格写真や歯型などを使い、歯を並べる空間と唇・歯ぐきなどのやわらかい組織、口の閉じやすさ、治療期間、抜歯の負担を複数の面から考えるとしています。
抜歯からすき間が閉じるまでの流れ
4番抜歯で知っておきたいこと
抜いた歯は元に戻せない
抜歯は元に戻せない処置です。抜く前に、非抜歯案、歯の間を削るIPR、歯列の拡大、奥歯を後ろへ動かす方法などが適用できるか、それぞれの限界も含めて説明を受けましょう。
横顔の変化は個人差が大きい
2024年に複数の研究をまとめて比べた分析では、4本の第一小臼歯を抜く治療は、平均として上下の唇の後退などと関連しました。ただし、30研究のうち29研究は過去の診療記録を比べた研究です。研究対象や治療法も同じではないため、平均値から一人の顔つきの変化を予測することはできません。
すき間が見える期間がある
抜歯後すぐに空間が閉じるわけではありません。治療途中は笑ったときにすき間が見えることがあります。結婚式や就職活動などの予定がある場合は、抜歯時期と見え方を事前に相談してください。
健康な歯を抜くことへの納得が必要
説明に納得できないまま急いで抜歯する必要はありません。必要な資料をそろえ、別の矯正歯科医へセカンドオピニオンを求める方法もあります。
抜歯後に連絡が必要な症状
圧迫しても出血が止まらない、顔の腫れや痛みが急に悪化する場合は、抜歯した歯科医院へ当日中に連絡してください。
急な息苦しさ、唾液も飲み込めない状態、意識がもうろうとする状態、止まらない大量出血がある場合は119番へ連絡します。
診断時に聞くべき8つの質問
- 歯を並べるために何mmの空間が足りませんか
- なぜ4番で、5番や別の歯ではないのですか
- なぜ2本または4本必要なのですか
- 抜歯しない場合、どの方法で空間を作りますか
- 抜歯案と非抜歯案で前歯の角度・口元・かみ合わせはどう変わる予測ですか
- 抜歯した空間は、前歯と奥歯の移動にどう配分しますか
- すき間が目立つ時期と、閉じるまでの見込みはどのくらいですか
- 抜歯後に計画変更となった場合はどう対応しますか
抜歯前に持ち帰って確認すること
4番抜歯は、第一小臼歯を抜いて歯を並べる空間を作る方法です。ただし、親知らずを抜けば4番を必ず残せる、4本ならかみにくくなる、4番なら口元が必ず下がるとは決められません。
抜歯は元に戻せないため、「なぜこの歯なのか」「非抜歯では何が難しいのか」「空間を前歯と奥歯へどう使うのか」を検査資料で確認します。説明を持ち帰り、分からない点を整理してから同意してください。
参考文献
確認日:2026年8月14日
参考
矯正歯科治療における標準治療の指針日本矯正歯科学会
参考
矯正歯科治療について日本矯正歯科学会
参考
抜歯・非抜歯について日本臨床矯正歯科医会
参考
健康な歯を抜くこともあるのはなぜですか?日本臨床矯正歯科医会
参考
Extraction vs nonextraction orthodontic treatment: a systematic review and meta-analysisPubMed
参考
Soft tissue changes following extraction vs. nonextraction orthodontic fixed appliance treatmentPubMed
参考
Dental extractions: post-operative instructionsUniversity College London Hospitals NHS Foundation Trust
参考
救急車を上手に使いましょう総務省消防庁


