歯列矯正におけるインプラント矯正の基礎知識と注意点

インプラント矯正とは?仕組みと目的をやさしく解説

インプラント矯正は、矯正治療で歯を動かす際の固定源(アンカレッジ)として、顎の骨に小さなネジ状の装置(矯正用アンカースクリュー、TADs)を一時的に埋入し、それを支点に計画的な歯の移動を行う方法です。一般のデンタルインプラント(欠損補綴のための人工歯根)とは役割も期間も異なり、治療が終われば取り外されます。

従来は固定源を隣接する歯に求めていたため、不要な方向の力(反作用)が出やすい面がありました。インプラント矯正では固定源を骨に求めることで反作用を抑えやすく前歯の圧下大きな後方移動といった難しい移動が設計上実現しやすくなる場合があります(ただし症例により異なります)。

MEMO

海外文献では「TAD(Temporary Anchorage Devices)」と表記されることが多いです。日本では「インプラント矯正」「ミニスクリュー矯正」「インプラントアンカー」など複数の呼称が使われています。

期待できるメリット(一般論)

臨床的には下記のような利点があると説明されることがあります。すべての方に当てはまるわけではない点にご留意ください。

  • 抜歯回避につながる可能性がある(骨格・歯列の条件に依存)
  • 反作用を抑制しやすく、前歯の圧下や臼歯の遠心移動など難度の高い移動に取り組みやすい
  • 固定源が安定しやすく計画の再現性を高めやすい
  • 結果として治療期間の短縮が見込まれるケースがある

銀座で働く現役歯科衛生士の木村さん

出っ歯の大きな後退や、開咬で前歯を下方向にしっかり動かしたい場面などで、インプラント矯正が提案されることがありますよ。

デメリット・注意点(医療広告ガイドライン配慮)

注意

以下は一般的な情報です。効果やリスクには個人差があり、年齢・骨の状態・清掃状態・装置設計など複数の要因で結果が変わり得ます。最終判断は検査・診断後に担当医と相談してください。

  • 小外科処置(局所麻酔下の短時間処置)を伴う
  • 清掃不良などで感染・腫脹・疼痛の可能性
  • スクリューの動揺・脱落が起こる場合があり、再埋入や計画変更が必要になることがある
  • 装置による粘膜の擦過感・違和感
  • 追加費用が発生するのが一般的

矯正治療に共通するリスク(依頼文の要点を中立に再整理)

  • 歯の移動に伴い痛み・違和感が出ることがある
  • 装置が唇・頬に当たり口内炎が生じやすくなることがある
  • 清掃が難しくなり、虫歯・歯肉炎・歯周病のリスクが高まる可能性
  • 治療後に保定を怠ると後戻りの可能性
  • 一部の装置は完成物薬機法の対象外となることがあり、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合がある
セルフケアの重要性

日々の歯みがき、フロス・歯間ブラシ、含嗽剤の併用、定期的なプロフェッショナルケアでリスク低減が期待できます。喫煙は組織の治癒に影響する可能性があるため禁煙が推奨されることがあります。

処置の流れと痛みの目安

インプラント矯正における埋入は、一般に数分〜十数分程度の短時間で行われることが多く、局所麻酔下で進みます。術後は鈍痛や違和感が数日残ることがありますが、鎮痛薬でコントロール可能と案内されることが多いです。痛みの感じ方には個人差があります。

STEP.1
初診・検査・診断
問診、口腔内写真、X線/必要に応じてCBCTで歯根位置・骨厚を評価。適応可否と目標を共有。
STEP.2
治療計画立案
埋入部位・ネジの径/長さ・荷重時期(即時/治癒待機)・清掃指導・合併症時の対応方針を決める。
STEP.3
アンカースクリュー埋入
局所麻酔下で短時間の小外科処置。出血は少量のことが多い。
STEP.4
力の付与・歯の移動
即時に荷重する場合と、一定期間の治癒後に開始する場合がある。装置はワイヤーやアライナーと併用されることがある。
STEP.5
メンテナンス・経過観察
粘膜の状態・スクリューの安定性・清掃状態を確認。必要に応じて位置変更や再埋入。

向いているケース/慎重に検討するケース

適応は検査・診断により個別に判断されますが、一般論として以下が挙げられます。

  • 向いている可能性:前歯の圧下・後退、臼歯の遠心移動、開咬・過蓋咬合の改善、部分矯正の固定源強化 など
  • 慎重検討:活動性の歯周疾患、清掃不良が改善できない、禁煙困難、全身疾患の影響、骨量不足が疑われる場合 など

費用の考え方(目安と留意点)

費用は地域・医院・症例で大きく変動します。目安としてアンカースクリュー1本あたり数万円の追加費用が案内されることがあり、全体矯正の装置費用に加算される形です。再埋入が必要になった場合の費用、除去費、通院回数によるコストも事前に確認しておくと安心です。医療費控除の対象となるケースもあります。

見積もり時のチェック

埋入本数、再埋入時の費用、除去費用、緊急時の対応、通院頻度、支払い方法(分割可否)を事前に明確化しておきましょう。

他の装置(ワイヤー/マウスピース)との比較イメージ

比較項目インプラント矯正(TADs併用)ワイヤー矯正マウスピース矯正
固定源骨に固定し反作用を抑えやすい固定歯に依存し反作用管理が必要アタッチメントや顎間ゴム等で補強
適応範囲難移動に選択されることがある幅広い計画次第で広いが制約あり
処置の性質小外科処置を伴う非外科的非外科的
期間の見通し短縮が見込める場合がある標準症例により長短あり
コスト構成装置費+スクリュー費など主に装置費装置費+追加処置あり得る

自宅ケアのポイント(清掃・食事・生活)

  • スクリュー周囲は軟らかいブラシやワンタフトで優しく清掃
  • フロス・歯間ブラシ・低刺激性洗口液を併用
  • 術後数日は刺激物・硬い食べ物を控える
  • 装置が当たる場合はワックスの利用を相談
  • 禁煙・十分な睡眠で治癒をサポート

よくある質問(FAQ)

インプラント矯正はどのくらい痛いですか?

局所麻酔下で行われ、処置中の痛みは限定的と説明されることがあります。術後は違和感や鈍痛が数日出ることがありますが、鎮痛薬で対応できるケースが多いとされています。

ネジは体に残りますか?

矯正用アンカースクリューは一時的な固定源です。治療が完了したら取り外すのが一般的です。

外れることはありますか?外れたらどうしますか?

動揺・脱落が起こることがあります。担当医が清掃状態や咬合、部位を再評価し、必要に応じて再埋入や位置変更を検討します。

費用はどれくらいですか?保険は使えますか?

地域や医院・症例で差があります。スクリュー1本ごとに追加費用が発生することが多く、全体矯正費に加算される形です。保険適用の可否は条件によって異なるため、事前の確認が必要です。

誰でも受けられますか?禁煙は必要ですか?

すべての方に適用されるわけではありません。骨量・清掃状態・全身状態などを踏まえて個別に判断されます。喫煙は治癒に影響する可能性があるため禁煙が推奨されることがあります。

治療期間は短くなりますか?

固定源が安定することで期間短縮が見込まれるケースはありますが、症例により異なります。装置の種類、移動量、協力度など複数の要因が影響します。

まとめ:適応とセルフケアの徹底が成功のカギ

インプラント矯正(アンカースクリュー/TADs)は、固定源を外部化することで反作用を抑え、難度の高い歯の移動に取り組みやすくする選択肢の一つです。メリットと同時に、外科的処置や清掃管理などの注意点もあります。検査・診断を通じて適応を見極め、セルフケアと定期受診を丁寧に続けることが、良い経過につながると考えられています。必要に応じて複数の医院で説明と見積を比較し、自分に合った治療計画を選びましょう。

インプラント治療については武蔵小杉グレイス歯科。矯正歯科様のブログに詳しく掲載されているのでよろしければ御覧ください!

参考
インプラントの寿命がきたらどうする?使い続けるリスクも解説!武蔵小杉グレイス歯科・矯正歯科