歯列矯正とオールオン4はどう違う?併用の考え方・向き不向き・費用・期間・リスクを解説!
「歯列矯正」と「オールオン4」は目的がちがう
歯列矯正は「自分の歯を動かして噛み合わせを整える」治療。一方、オールオン4(All-on-4)は「4本のインプラントで片あご(フルアーチ)を固定式の歯で回復する」外科・補綴(ほてつ)治療です。つまり、矯正=自分の歯の移動、オールオン4=歯の喪失や保存困難時の“丸ごと回復”。検索で混同しやすいですが、役割はぜんぜん違います!
「抜歯が多いなら、いっそオールオン4で…」と迷う方もいますが、保存できる歯が十分あるなら矯正の検討が先!逆に、重度歯周病や多数歯欠損で“残すより回復が合理的”ならオールオン4の土俵です。
オールオン4の基本:概念・適応・メリット/限界
オールオン4は、前方に垂直2本+後方に傾斜2本の合計4本インプラントで、骨移植を極力回避しながら即日固定式の暫間補綴を装着できるよう設計されたコンセプト(即時荷重プロトコル)です。一般に下顎の方が上顎より生存率が高い傾向が報告されていますが、個々の骨量や清掃能力、全身状態で適応は変わります。
- 想定する人:重度歯周病/多数歯欠損で義歯が合わない・見た目や咀嚼の回復を固定式で目指したい人。
- メリット:骨移植の回避が期待できる、工程の短期化、即時の固定性(条件次第)。
- 限界:上顎は難度が上がりやすい、全員に万能ではない(骨量/全身状態/清掃力で適応が左右)。
「歯列矯正 オールオン4」で迷いがちなケースと判断軸
よくある3パターンを整理!それぞれの“判断の軸”を押さえると迷いがほどけます。
状況 | よくある悩み | 判断の軸(例) | 選択肢の例 |
---|---|---|---|
保存できる歯が多い(う蝕/歯周病は軽〜中等度) | 見た目・噛みにくさ | 保存可能性・歯根の健全性・清掃力 | 歯列矯正(必要に応じ補綴や単独インプラントは矯正後に合わせる) |
重度歯周病や動揺歯が多い | 義歯が合わない・噛めない | 残存歯の予後・全身疾患・喫煙・衛生管理能力 | オールオン4等のフルアーチ回復(適応判定のうえ) |
部分欠損+叢生/ズレ | インプラントか矯正か順番は? | 欠損部スペース確保・理想咬合への道筋 | 矯正先行→スペース確保→インプラントが合理的(インプラントは基本動かせないため)。 |
万能の正解はありません!喫煙・未治療の歯周病・糖尿病などはインプラント周囲炎のリスク要因。適応判定と口腔衛生の自己管理が超大切です。
オールオン4の治療ステップ(一般例)
素材と設計のちがい(強度・修理性・清掃性のトレードオフ)
最終補綴の例 | 長所 | 留意点 | 補足 |
---|---|---|---|
メタルレジン(メタル+アクリル) | 修理しやすい・費用を抑えやすい | 摩耗・着色・人工歯の脱離が起きやすい | 暫間〜本番まで運用例が多い |
フルジルコニア | 高強度・審美(設計次第) | 欠けや破損時の修理負荷が高い、咬合設計が重要 | 合併症率に注意する報告もある |
PEEK+アクリル/複合材 | 軽量・衝撃吸収性に期待 | 長期エビデンスは蓄積途上 | 近年の臨床で採用増加中 |
素材の“絶対解”はありません。咬合力・歯ぎしり・清掃の得手不得手、そしてリペアのしやすさを総合判断します!
矯正とオールオン4の“順番”問題(併用の設計)
部分欠損なら矯正先行→インプラントが基本線。なぜなら、インプラントは動かないからです。矯正でスペースと咬合位を整えてから、その最終位置に合わせて埋入/補綴する方が合理的で、長期安定にもつながります!
オールオン4は“ほぼ全歯喪失”が前提のフルアーチ回復。保存できる歯が十分あるのに「楽そうだから」と切り替えるのは適応外になり得ます。まずは診断が最優先!
費用・期間のめやす(個人差あり/医療広告規制に配慮した一般論)
治療 | 期間のめやす | 通院頻度 | 費用の考え方 | 備考 |
---|---|---|---|---|
歯列矯正(全顎) | 1.5〜3年 | 月1回前後 | 自由診療。装置/地域で幅あり | 保定期間が必須 |
オールオン4(片顎) | 手術当日〜数か月で最終補綴へ | 術前後の要所通院 | 自由診療。素材・技工で差が大 | 上顎は骨条件で難度が上がりやすい |
ここで示す内容は代表的な目安です。実際の見積・回数・工程は個別設計で変わります。
合併症・リスクと予防策(矯正/インプラント共通)
- 痛み・違和感:調整/術後に一時的な不快感が出ることがあります。
- 装置のこすれ・口内炎:ワックス等で対処。長引く場合は再調整。
- 清掃性の低下:装置や暫間補綴で磨きにくく、むし歯/歯肉炎/歯周病/インプラント周囲炎のリスクが上がります。
- 後戻り:矯正後は保定装置を指示どおりに。
- 制度面:一部の矯正装置は完成物薬機法対象外で、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。
インプラント周囲炎のリスク因子として、既往の歯周病・喫煙・糖尿病・肥満などが挙げられます。禁煙・口腔衛生・定期メンテは“超”重要です!
セルフケアとメンテ(長持ちの必須条件)
矯正中・暫間補綴中の清掃
- 小回りのきくブラシ/ワンタフト/歯間ブラシ/フロススレッダーを使い分ける
- 研磨剤ひかえめのペースト+洗口液の併用
- 就寝前は丁寧に、砂糖飲料は控えめに
インプラント補綴の清掃
- スーパーフロス/スレッド付フロスでポンティック下を清掃
- インターデンタルブラシでアバット周囲をやさしく
- 定期検診でスクリュー緩み・樹脂摩耗を早期発見
ケース別:矯正とオールオン4の“併用シナリオ”
症例イメージ | 狙い | 主なステップ |
---|---|---|
上顎重度歯周病、下顎は保存可能 | 上顎は機能回復、下顎の歯列最適化 | 上:オールオン4、下:歯列矯正→補綴調整(咬合再構成の設計が肝) |
多数歯欠損+叢生 | 最小本数インプラントで機能回復 | 矯正先行でスペース/軸を整える→必要部位のみインプラント(All-on-4適応外) |
総義歯が合わず痛い/外れる | 固定式の快適性と咀嚼の改善 | オールオン4適応判定→即時荷重/遅延荷重の選択→最終補綴とメンテ設計 |
よくある質問(Q&A)
オールオン4は上顎でもうまくいきますか?
条件が合えば良好な成績が報告されていますが、統計的には下顎の方が生存率が高い傾向があります。骨量や上顎洞の位置など、個別の評価が必要です!
矯正とインプラント、順番はどちらが先ですか?
部分欠損の場合は矯正先行が原則的に合理的。歯を動かしてスペースと咬合位を整え、その“最終位置”に合わせてインプラントを入れると予後が組み立てやすいです!
手術当日に固定式になるって本当?噛めますか?
即時荷重のプロトコルがあり、条件を満たせば術当日に固定式の暫間補綴が入ります。ただし硬い物は控えるなど、食事指導に沿った過ごし方が大切です!
最終補綴の素材はジルコニアが一番いいの?
強度は魅力ですが、設計や咬合で合併症率が上がるとする報告も。メタルレジンは修理性が高く、PMMAやPEEKなど軽い素材も選択肢。ケースにより最適解は変わります!
リスクを減らすには何をすればいい?
禁煙・歯周治療・ブラッシング練習・定期メンテが王道。既往の歯周病や糖尿病、喫煙は周囲炎のリスク要因なので、セルフケアとプロケアを両輪で続けましょう!
まとめ:焦らず“診断”から!
「歯列矯正 オールオン4」で迷う時、まず確認したいのは歯の保存可能性と全身・生活背景。保存できるなら矯正が第一選択になりやすく、保存が難しく総義歯が合わないならオールオン4の適応評価へ。どちらを選んでも、長持ちの主役はあなたの清掃とメンテ通院です!一歩ずついきましょう!
この記事の筆者
参考にしたページ
All-on-4 総説(2017): https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5347302/
日本人の長期成績(上顎生存率の傾向に言及, 2023): https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10632321/
Nobel Biocare|All-on-4 コンセプト概要: https://www.nobelbiocare.com/en-us/all-on-4-treatment-concept
Nobel Biocare|手順マニュアルPDF: https://www.nobelbiocare.com/en-us/system/files/gmt_import/All-on-4%20treatment%20concept%20manual%20US_79360%20C.pdf
即時荷重のレビュー(Papaspyridakos 2014): https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24660202/
フルアーチ補綴の材料と合併症(2024総説): https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11674276/
3年アウトカム(2024): https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11242820/
インプラントと矯正の順番に関する臨床解説: https://luvmyorthodontist.com/dental-implants-impact-orthodontic-treatment/
周囲炎のリスク要因(総説/レビュー等のまとめ): https://aap.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/JPER.24-0154
周囲粘膜炎/周囲炎の有病率レビュー: https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0300571225003586